運動器の理学療法士が医師に進言するタイミング

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医師に物申すのは勇気がいることでしょうか?医学的知識の有無は関係なし!カンファレンスでの伝え方、反論を伝えるときの工夫を提案します。それでも難しい場合もありますので、私自身の経験や知識のプラスとなる情報を交えながら進言できるように例示しました。理学療法士も看護師も医師も苦労しているコミュニケーションの各論ですが、繰り返しの中で顔が見える本当のチームになります。線維筋痛症、筋原性疾患、混合性疼痛に関するおまけ情報付きです。

Buenas noches!terapeuta!(スペイン語でこんばんは療法士のみなさん)、週の真ん中水曜日の江原です。本日は『運動器の理学療法士が医師に進言するタイミング』と題しまして記事を書きたいと思います。

 

運営しているNPOの主催事業で出会う理学療法士の悩みの多くが、ご自身の知識や技術不足についてお話しされます。しかし、話を聞きながら深堀りしていくとだんだんと働く環境の問題に行きついていくことが多いのです。それって体制や環境の悩みを、知識や技術不足に転換していないかい?と気づくわけです。

 

中でも本来はチーム医療のパレハ(スペイン語で仲間)である医師の意見に引っ張られたり、それに疑問を持たずに臨床を淡々を継続していたり、コミュニケ―ション不足を克服しようとしていなかったりが根底にある問題ではないかと感じています。痛みの診療システムや体制づくりが痛みの学際的診療の中心なので、日本の医療のかじ取り役である医師との関係づくりはとても重要なのに…。

 

完全に私見ではありますが、運動器疼痛や慢性疼痛のリハビリテーションで役立った進言に関わるポイントについてまとめてみました。

本日のトピックス

医学的知識 あってもなくても自信をもって

カンファレンスでのポイント

違う治療方法が必要と感じたときの伝え方

普段からのコミュニケーション

 

医学的知識 あってもなくても自信を持って

医師に意見を言いづらい進言しにくいという理学療法士になかには、医学的知識が不足していることを理由に挙げている方がいます。他職種連携のポイントを指導するブログをいくつか見てみましたが、確かに『知識を深めておくとよい』という意見が共通していました。

 

ただ、あまりに気にしすぎて自信がなくなってしまい、議論や進言する機会を失うのも困りものです。医師との議論は勉強できるチャンスなので非常にもったいないです。

 

まず医師と同等の知識を知ってなきゃいけないという思い込みを捨ててみましょう。そして『わからないことがあるので教えていただいてもよろしいでしょうか?』という入りで、意見交換を始めてみるのも良いと思います。


例:線維筋痛症患者の議論

医師『顎関節症を併発している全身に広がった痛みがある患者さんだね。まだ診断されていないならば、線維筋痛症も疑ってみようと思う』

PT先生、どういうことなのか教えていただいてもよろしいですか?顎関節症がポイントなんですか?

医師『どちらも心理社会的要因が濃厚に関わる疾患のため、そのように考えたんだよ。PTから見て何かありますか?』

PT『心理社会的要因の検査バッテリーを取ってみます。ライフイベントも私がきける範囲で聴取してみます』

顎関節の痛み 臨床的特徴
咀嚼筋痛は局部のうずく様な鈍痛で、特に閉口筋や耳のまわりに現れる。咀嚼筋痛は安静時にも発現し、顎運動の際には悪化する。痛みは朝と夕方においてよりひどく、10cm疼痛スケールで3-7の強さの痛みとして表現される。関連症状は顎運動制限、頭痛、耳の膨満感、および首の痛み(因果関係はいまだ確立されていない)である。咀嚼筋痛は線維筋痛症におけるような全身的な筋痛の一部である可能性もある。

顎関節の痛み IASP fact sheet

わからなかったことは素直に伝えれば、教えてくれるのが仕事としては当たり前だと思います。その背景には医師の患者を少しでもよくしたいという思いがあります。


また、医学的知識がある場合にはこんな風に進言してみてはいかがでしょうか?

例:下肢痛と筋原性疾患

医師『腰椎L4/5の変性が確認できるんだけど、痛みは両大腿の安静時痛なんだ』

PT『でも画像所見と症状は一致しないですね。筋原性疾患の影響は考えられますか?血液検査データは異常値ありましたか?

医師『問題なかった。体重の増減もないし器質的なものは考えにくそうだね。

PT『わかりました。それでしたら主訴は安静時痛ですが機能評価を行って機能障害から考えます。先生は画像から考えられる治療を行ってください。』

多発性筋炎・皮膚筋炎 polymyositis:PM/dermatomyositis:DM
主に大腿や上腕などの四肢近位筋、さらに体幹や頚部の筋肉を中心とした横紋筋に持続的な炎症を引き起こし、同部位の筋肉痛や筋力低下を来たす疾患である。患者血清からは抗Jo-1抗体を始めとした多彩な自己抗体が検出され、その病態形成には免疫機能の異常が大きく関与することから、膠原病に分類されている。
臨床的には筋症状のみ呈する場合をPM、ゴットロン徴候やヘリオトロープ疹、関節伸側の落屑性紅斑など、特徴的な皮膚症状を伴う場合をDMとしている。 PM/DMは筋肉や皮膚症状以外に、悪性腫瘍や間質性肺炎(interstitial pneumonia, IP)の合併が高率であり、これらは生命予後を左右する大きな要因となる。特にDMにおいて、その傾向が強くみられるため注意を要する。筋症状が典型的な症例では、血液検査において血清クレアチンキナーゼ(creatine kinase, CK)やクレアチン、ミオグロビン、アルドラーゼ(aldolase, ALD)などの筋原酵素が上昇を示すことがほとんどであるが、amyopathic DMなど、皮膚症状や肺病変が著明で筋症状に乏しく、筋原酵素の上昇が見られない症例も存在する。 抗Jo-1抗体はPM/DMに特異性が高い自己抗体であり、本抗体の測定は診断に有用であるが、その陽性率は20%前後と決して高いものではない。近年、本抗体以外にも多数の筋炎特異的自己抗体(myositis-specific autoantibodies, MSAs)が同定されている。
これらの抗体の中には関節症状や筋症状、皮膚症状、肺合併症、悪性腫瘍などの臨床症状と関連するものも多く存在し、一部は実臨床においても活用されている。

痛みと鎮痛の基礎知識 ミオパチーの項より引用

画像所見や痛みの出現から理学療法士が行える範囲を明確にして提案すると医師が行うべき治療との分業ができます。診療が非常に効率的になるため医師にも喜ばれます。私の場合このパターンのやり取りは日常茶飯事で、日々の臨床で行うことで治療効果が確実に上がる実感を持っています。

 

運動器疾患が臨床のメインストリームだと、筋原性疾患や膠原病などの二次的慢性疼痛が頭に上ってこないことが医師でも時折あります(多くの患者さんをみているとみな運動器疾患に見えてしまいやすい可能性があります)。

 

医師が悩んでいるときは、進言の効果的なタイミングです。

 

カンファレンスでのポイント

これも私が総合病院時代に実践してきたポイントです。自分の場合は整形外科カンファレンス・回診は金曜日の夕方行われていました。

 

ベッドサイドリハビリで忙しいタイミングですが、進言チャンスが転がっているのでできるだけ参加していました。これも病院によって様々ですが、若手整形外科医が部位ごとに術後の経過を部長に報告していくスタイルでした。

 

カンファレンスでは先手を取ることを実践していました。聞かれてもいないのにリハビリでの様子や進捗について柵に報告してしまうのです。整形カンファレンスでリハビリの問題になるのは、退院に向けた進捗状況だと思います。

 

よくないことを聞かれる前に、いいことをどんどん報告していく方式です。

 

これは別に進捗がよくない患者さんをごまかすことが目的ではありません。報告する姿勢を見せることで積極的に関わっていく態度を明確にしているわけです。

 

本稿の主題は、医師に進言するタイミングについてでしたが、手術の連続でカンサード(スペイン語で疲れた)でほっと一息ついている整形外科医が集まっているカンファは進言しやすい場面です。さらに円滑に議論する工夫として、積極的にいいことを話しておけば言いづらいことも受け入れやすくなります。

 

ちなみに新入職員で早く職場になじみたい方も、積極的にカンファに出て発言することは顔を覚えてもらうことに非常に役立ちます。前項の医学的知識のポイントと組み合わせるとよいと思います。

 

医師が聞きた

運動器の理学療法士が医師に進言するタイミング

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